PROPS プロトーク [第2回]「開発・オペレーション」事前レビュー

レビュー/再録


PROPS プロトーク [第2回 開発・オペレーション]事前レビュー

執筆者:山岡史典(鉄道会社勤務/PROPS 第2回コーディネーター)

PROPSプロトーク 第2回「開発・オペレーションー日本の都市開発モデルは海外展開できるかー」の開催(12/9)が近づいてきました。本レビューでは、今回のテーマの位置づけとそれぞれのゲストをお呼びした PROPSの意図を説明いたします。

今回のテーマは「開発・オペレーション」です。区画整理や宅地造成、工場等の跡地利用などにより、その土地の市場価値や公共的価値を創出する「開発」、土地や建物を運用し、価値を高める「オペレーション」、2つの面から都市開発分野の次の市場(ネクストマーケット)を考えます。

PROPSでは、この開発を2つに大別して議論を進めます。デベロッパーが主体となって供給している事業物件と呼ばれる開発を「市場原理型の開発」、再開発事業をはじめとした区画整理等の制度を活用して地域の問題を解決する開発を「問題解決型の開発」と定義し、それぞれの開発の今後について議論を進めます。

市場原理型の開発では、大企業が主体となり、市場が縮小するなかでオペレーションに着目し、海外進出を目論んでいます。問題解決型の開発では、中小の企業や設計事務所が担い手となり、人口減少や震災復興といった縮小社会が抱える問題に向き合い、活躍の場を模索しています。縮小の時代において、こうした建設・不動産業界のプレイヤーはどうすれば生き残れるのか。当日の議論にご期待ください。

 

川原秀仁氏 (山下ピー・エム・コンサルタンツ常務取締役)

1960年生まれ。日本大学理工学部建築学科卒。農用地開発/整備公団、農水省、JICA等を経て、山下設計に入社。 1999年に山下ピー・エム・コンサルタンツに転籍。山下PMCの創業メンバーとして参画し、国内CM技術の礎を築く。メガプロジェクトを中心に代表的 CM/PM案件に従事し、近年では建物の事業継続と資産保持の観点から顧客企業の経営戦略をサポートする事業創造部門の立上げを行う。CCMJ、認定 FMr、一級建築士。

コンストラクション・マネジメント(CM)やプロジェクト・マネジメント(PM)は、事業主から依頼を受けて、発注者・設計者・施工者、各種協力会社の間に入り、プロジェクトのコントロールを行う仕事です。CM/PMを専業に行う山下PMCの常務取締役である川原さんは自らの仕事を「フレームをつくること」と述べています。山下PMCの事業創造部門では、前述のCM/PMの枠組みを超え、CM/PMで培ったノウハウを活かし、発注者とともに建物を媒介にした新しいビジネスモデルを立案しています。

川原さんには、施設運営やビジネスモデルといった発注者のノウハウ(オペレーション)を開発に取り込むことで、建物はどのように変わり、どのような形で新たな市場を創っていくのかを伺いたいと考えています。

○関連リンク
・日本コンストラクション・マネジメント協会「CMとは何か」
コンストラクション・マネジメントとは何かを説明しています。
CM方式の特徴やタイプがわかりやすくまとめられています。学生の方や建設以外の業界の方は事前に読まれるとCMという役割を理解する助けとなるはずです。
http://www.cmaj.org/index.php/cmaj/whatscm

・山下PMC「武田薬品工業湘南研究所プロジェクト」
山下PMCが国際CMコンクールで準グランプリに輝いた巨大プロジェクト、「武田薬品工業湘南研究所」の概要が掲載されています。
http://www.ypmc.co.jp/project/shonan.html

・内閣府・経済産業省「未来開拓戦略」
事業創造部門において川原さんは低炭素革命、健康長寿、日本の魅力発揮、財務の4つの軸が重要だと述べています。これらのキーワードは内閣府が成長戦略として打ち出したものとリンクします。こうした分野が建設・不動産業界ではどのような形になるのかを是非考えてみて、当日の議論にご注目ください。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/minutes/2009/0417/item7.pdf

・動画 建築・不動産実務クラスタ交流会 第1回より 川原氏プレゼン「ボーダーレス社会が向かう新たな事業創造」(再生時間:1:09:00~)
日本の建設・不動産業界における、リスク概念の定着や情報開示、説明責任の重要性について言及し、山下PMCの事業創造部門が成立した背景をお話しいただいています。
http://www.ustream.tv/recorded/4838952

 

中尾俊幸氏 (再開発コーディネーター/アール・アイ・エー開発企画一部副参事)

1975年、大阪府生まれ。京都大学建築学科卒。東京大学大学院都市工学専攻修士修了。2000年、アール・ア イ・エー入社後、東京・横浜で再開発事業や跡地開発関連の都市計画や事業推進実務に従事。国土交通省等の調査業務等を通じ、全国のまちづくりや再開発事情 にも精通。再開発コーディネーター協会個人正会員、芝浦工業大学非常勤講師。技術士(都市及び地方計画)、再開発プランナー。

再開発コーディネーターは、土地所有者(地権者)をはじめとした多数の利害関係者の調整を行い、事業計画の立案や事業にあった開発制度の活用の検討等、長期間に渡る開発事業を着実に完成へと導く役割を担っています。地方の再開発を多く手がけるアール・アイ・エー(以下RIA)で再開発に従事されている中尾さんには、富山市の総曲輪フェリオや金沢市の近江町市場といった同社の事例を例にとって「地方における再開発」の特性についてお話いただきます。

中尾さんには、縮小の時代において地方の再開発はどのような可能性を秘めているのかや、地方都市が抱える問題について伺いたいと考えています。

○関連リンク
・株式会社アール・アイ・エー「再開発事業のコーディネートの流れ」
中尾さんが担当されている、再開発コーディネートとは具体的にどのような業務なのかを知ることができます。
http://www.ria.co.jp/ria_design/flow/

・賑わい拠点の創出「総曲輪(そうがわ)フェリオ」竣工
富山市の総曲輪フェリオは、地方都市中心部の再整備と、老朽化した地元百貨店の建て替えを事業に組みこみ、市街地活性化を実現した再開発事例です

http://www.ria.co.jp/news/review/vol11.html

・市場の雰囲気の継承 「近江町いちば館」誕生
金沢市の近江町いちば館は、中心市街地で老朽化が進む木造密集地区の再生に加えて、既存の歴史的建築物の保存・活用を実現した再開発事例です。リンク先では、工事期間中の休業を避けるために仮設店舗を設けて顧客流出を最低限に押さえる等、権利者が多い再開発事業特有の問題解決事例が報告されています。
http://www.ria.co.jp/news/review/vol17.html

○関連書籍
・まちづくりびと 再開発合意ものがたり
中尾さんのオススメの書籍です。実例をもとに、再開発コーディネーターと地元地権者や企業、行政との生々しいやりとりが収録されています。
http://www.amazon.co.jp/dp/4902611368/

 

net_heads氏 (組織設計事務所勤務)

1974年、茨城県生まれ。都内某大学大学院修了。就職氷河期とそれに続く不況に翻弄されつつも、ゼネコン、アトリエ 事務所、再開発を主とする中堅組織事務所を経て、現在は都内大手組織事務所に勤務。前職で培った都市計画的手法の知識や、区画整理・開発許可等といった土木的な実務の経験を生かし、現職においては、再開発案件、その中でも大規模商業施設の設計・監理をメインに手掛けている。1級建築士、宅地建物取引主任者。

net_headsさんは、ゼネコン、アトリエ設計事務所、組織設計事務所にて培った豊富な開発事業での設計経験をベースに、大型SCや鉄道会社の開発の実態についてお話ししただきます。海外への鉄道システムの輸出など、近年注目されつつある鉄道会社ならではの開発手法や、公開情報をベースに京阪電鉄や東急電鉄といった各鉄道会社の海外進出における特性などを解説していただき、「鉄道会社の都市開発モデル」の実現可能性について論じていただきます。

net_heads さんには、その鉄道特有の都市開発モデルを鉄道事業以外の分野でも活かすことができるのかについてもお話を伺いたいと考えています。

○関連リンク
・Business Media 誠「官民一体で海外勢に挑め! 鉄道インフラ輸出で日本企業が快進撃」
鉄道システムの輸出は、鉄道会社だけでなく、車両を製作するメーカー、システム開発によるIT系企業、駅周辺開発を行う不動産業・建設業・小売業など様々な業界を巻き込んで海外進出することになります。こちらの記事では鉄道会社以外でも国内の多くの企業が鉄道ビジネスに可能性を感じていることがわかります。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1208/16/news009.html

・「鉄道輸出へコンサル設立:JR東日本など7社」
鉄道輸送業界では、JR東日本、東京メトロなど計7社の鉄道会社が海外事業のコンサルティング業務を行うことを目的とする日本コンサルタンツ株式会社を設立する等、鉄道各社は生き残りを賭けてどのように海外進出すべきかを模索しています。
http://news.nna.jp/free/news/20111006icn001A.html

・動画 建築・不動産実務クラスタ交流会 第1回より net_heads氏プレゼン「SC事業者の発注形態とその課題」(再生時間:0:42:00~)
大規模商業施設における発注形態について解説し、専門性の偏り等の問題点を指摘しています。
http://www.ustream.tv/recorded/4838952

○関連書籍
・日経ビジネス2008年11月10日号「特集:巨大流通業JR ジャパンリテール」
JR本州3社の流通関連事業(駅ビル、エキナカなど)の合計売上高はセブン&アイ・ホールディングス、イオンに次いで3番目に位置し、JRはJapan Railwayという本来の名称よりもJapan Retailになりつつあると言われています。なぜJRはここまで流通業を発展させることができたのか。この特集では立地優位性だけではない、JRの流通戦略について言及しています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/premium/20081106/176428/

 

藤村龍至氏(建築家/東洋大学専任講師)

1976年東京生まれ。2008年東京工業大学大学院博士課程単位取得退学。2010年より東洋大学専任講師。藤村龍至建築設計事務所主宰。建築設計と並行して展覧会のキュレーションやシンポジウム、出版物の企画、論考等の寄稿多数。国土計画や建設産業の現状の批評と予言を行った「列島改造論2.0」を『思想地図β』に発表し、1970年代以後の巨大開発をレビューする書籍等を準備中。

藤村さんには戦後日本の都市開発史の観点から、総論的に開発の未来や、日本の都市や地方の行方について伺います。日本が世界を先導できる開発モデルとは何なのか。そしてそのような都市開発モデルの前にアトリエ設計事務所や組織設計事務所はどのような戦略を立てていくべきなのかをお話しいただきます。

藤村さんには、論考「列島改造論2.0」でも論じている、都市のマクロ戦略として「ステーションシティ」、ミクロ戦略として「小中学校を中心とした自治体の再編」を日本の開発の将来像を提示していただき、マクロとミクロのバランスのとれた論点をご提示いただきます。

○関連リンク
・mammo.tv 日本社会の縮小と成長を担う新たな「列島改造論2.0」とは?
→藤村さんが列島改造論2.0で重要なキーワードとして掲げた「ステーションシティ」と「小中学校を中心とした自治体の再編」について言及しています。
http://www.mammo.tv/interview/archives/no306.html

・「藤村研究室2012年度フィールドワーク−東京における巨大開発とその周辺 togetter」
現在藤村さんは自身の研究室でも巨大開発におけるゼミを行っており、田中角栄の列島改造論に始まる戦後の巨大開発から近年の郊外再開発までフィールドワークを通して、洞察を行っています。過去の巨大開発を振り返ることで、今後の開発において示唆的なキーワードが散りばめられています。
http://togetter.com/li/310579

○関連書籍
日本2.0 思想地図β vol.3(著者:東浩紀ほか 2012年 ゲンロン)
今回のテーマに関係した、藤村さんの列島改造論2.0が掲載されています。ぜひ、ご一読ください。
http://www.amazon.co.jp/dp/4990524357/

○藤村さん twitterアカウント
https://twitter.com/ryuji_fujimura