PROPS プロトーク[第3回]「働き方・生き方・稼ぎ方」第2部事前レビュー

レビュー/再録

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執筆者:山道雄太(編集者/PROPS 第3回第2部コーディネーター)

PROPSプロトーク第3回「働き方・生き方・稼ぎ方」の開催が間近に迫って来ました。今回はテーマに併せて、2部制としています。本稿では、第2部『キャリアを活かす、仕事の”場”をつくる』の解説とスピーカー紹介を行いたいと思います。

近頃、シェアやノマドワーキングといった、会社組織に与しない新しい生き方が注目されています。メディアに切り取られる姿は、自由奔放で牧歌的。その姿は、非常に魅力的ではあるものの、同時にその様な生き方へ踏み出すことに高いハードルを感じます。「結局、新しい生き方を実践している人たちの能力と意志ありきで出来ているのではないか」と。

なぜ、新しい生き方に距離感を感じるのか。それはきっと、「せめる方法」だけが紹介され、「まもる方法」が見えてこないことに、あるのではないかと考えます。
「失敗した時のことなんて考えるな!」なんて成功者の根性論を聞かされても、腹は減るし、寝る場所も必要なわけです。そういった生活を守りつつ、どうやって自分に合った生き方を選択できるか。そういった部分を押さえつつ、新しい生き方を考えてゆく場にしたいと考えています。

第2部では、新しい生き方を選択された人の中でも、自らの生きる場所を自ら生み出している方々をお呼びしました。

事業を運営する立場の人が、自分の思う生き方を実践出来る場をどの様につくりあげているのか、また建築設計者に頼らずとも自らの持つ人的・社会的資源を用いて独特の雰囲気の場所を作り上げることができたのはなぜなのか。コワーキングスペースやシェアダイニングといった新業態の運営者、ナリワイ実践家、ニートや若者支援NPO理事のお三方を迎え、“場”のつくり方や持続させ方を伺いたいと考えています。

また、PROPS第2回以降の会場でもあるコクヨで、ワーキングスペースの研究をされている山下正太郎さんをコメンテーターとしてお迎えします。全体の討議が特殊解ではなく、多くの人の実感として咀嚼できるよう、俯瞰的な視点を示して頂きながら会を進めていきます。

1部が「稼ぎ方」を話すのに対し、2部では「生き方」をメインに話を行います。スピーカーの方々は職業こそ特殊ですが、その「生き方」には多くの人の参考になるヒントがたくさんあるはずです。
これから事業を立ち上げようとしている人はもちろん、独立する気がない人にも楽しめる内容になっています。これをキッカケに、自分の生存戦略を考えてみてはいかがでしょう?
当日1月20日は、ぜひ会場へ足をお運びください。

 

ゲスト登壇者紹介

中村真広さん(クリエイティブ・ディレクター/株式会社ツクルバ 代表取締役 CCO)

1984年千葉県生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産デベロッパー、ミュージアムデザイン事務所を経て、2011年8月ツクルバを設立。シェアードワークプレイス【co-ba】、新形態ダイニングバー【1K -Tokyo Share Dining-】などの空間プロデュースを手がける。場づくりの企画・設計・運営における一貫性を作るべく「枠組みからのデザイン」を行い、これまでになかった「場」の発明、そしてソーシャル・キャピタルの構築を目指して活動している。

中村さんはデザイン事務所に勤めながら、将来やりたいことをたくさん試してみたと言います。その一つが池袋のカフェ「A.P.T. lounge」。結婚式場はあるが二次会会場の少ない池袋という立地特性を読み、結婚式の二次会会場に特化した場づくりを行ったのです。2011年2月にオープンし、翌月11日に震災が起こり、翌々日に肺を患って入院。このことをキッカケに、今の会社「ツクルバ」を起業されました。

会社に守られている最中にたくさん種を撒き、上手くいきそうなものを選んである程度のところまで育ったらそちらの収穫に専念する。中村さんは、そうやって新しい生き方の道筋を見つけたと言えます。

当日は、〈企業〉から〈起業〉へ進まれたお立場から、お話して頂きたいと考えています。また、今回スピーカーの中では唯一の建築出身者ですので、空間的な場づくりと非空間的な場づくりについても、お伺いできればと思います。

○関連リンク

・株式会社ツクルバ
中村さんがCCOを務める会社。「場を発明する」をコンセプトとしており、オフィスやカフェといった既存業態にコミュニティやシェアといったアイデアを組み込んだ、新しい場づくりを展開中。
http://tsukuruba.com/

・co-ba
「ツクルバ」の運営するコワーキングスペースです。クラウドファンディング「CAMPFIRE」で起業資金を募り、2.5倍の支援を受け2011年12月にオープンしました。業態はシェアオフィスと似ていますが、単なる場のシェアではなく、コミュニティを共有することが主眼に置かれた場となっています。
http://co-ba.jp/

・人ごとの魅力を知るダイアログ(中村真広)
2012年5月に「co-ba」の1階上にオープンした、シェアライブラリー「co-ba library」についての中村さんへのインタビューが掲載されています。起業のキッカケからいままでのお仕事を振り返って話されており、当日お話頂く内容の一端が掲載されています。
http://hitogoto.com/maa/

・ツイッターアカウント
https://twitter.com/maa20XX

 

伊藤洋志さん(ナリワイ実践家/全国床張り協会会長など)

1979年生まれ。香川県出身。京都大学大学院農学研究科森林科学専攻修士課程修了。個人で始められて、頭と体が鍛えられる小さい仕事を「ナリワイ」と定義し、ナリワイを複数持つ働き方を実践。これまでに「床さえ張れれば家には困らない」を合い言葉にしたサークル的ギルド団体「全国床張り協会」などの運営を行う。著作に『ナリワイをつくる : 人生を盗まれない働き方』(東京書籍)。

大学院卒業後、人材会社で働いていた伊藤さん。はじめの1年で就職サイトの立ち上げを遂げるも、体調を崩し退職。ライター・編集・企画をして生計を立てつつ、「ナリワイ」という働き方を提唱して、自身でナリワイを実践しながらその普及活動を行なっています。

一般企業の理念は「利益を上げる」ことですが、ナリワイの基本理念は「固定費を下げる」こと。学生時代に屋久島で100万円ほどの収入で暮らしていた8人家族を見てそう思ったと言います。収入が少なくても、家賃が要らなくて、食糧を自給できれば生きて行けるのだと。これが、伊藤さんのリスクヘッジの取り方なのです。

当日は、〈企業〉から〈生業〉へと転身したお立場から、お話して頂きたいと考えています。現在は東京でナリワイを実践されていますが、その生き方には地方部のリソース活用が重要な役割を果たしています。都市と地方の関係性についても、お伺いできればと思います。

○関連リンク

・ナリワイその1「モンゴル武者修行ツアー」
遊牧民の生活を体験しに、モンゴルへと赴きます。遊牧民は自分でゲル(移動住居)をつくり、食べ物を手に入れ、衣類もつくります。今では太陽光発電をつかい電気も自給しています。そんなモンゴル流ナリワイを体験しに行くツアー。
http://www.furowork.net/mongolia/

・ナリワイその2「熊野暮らし方デザインスクール―田舎で窯焼きパン屋をひらく―」
田舎暮らし体験モノは巷によくあるけれど、いろいろやっても短い間では深いところまでは学べません。そこで、1週間かけてパンづくりのみみっちり取り組むのがこのナリワイ。田舎で暮らすことを深く学べるようにしています。
http://www.furowork.net/kumanookrsktdesign-pan1/

・twitterアカウント
https://twitter.com/marugame

○著作の紹介

・ナリワイをつくる―人生を盗まれない働きかた―(東京書籍/2012)
「ナリワイとはなにか?」を一から紹介されている伊藤さんの単著。ナリワイはフリーランスと混同されがちですが、市場の渦中で、自らの能力・体力をフル活用してゆくフリーランスに対し、ナリワイを「そんな世界に不向きな非バトルタイプ人間に適した作戦なのである」と位置づけています。
http://www.tokyo-shoseki.co.jp/books/80626/

 

菊池 健さん(NPO法人NEWVERY理事・事務局長/トキワ荘プロジェクト ディレクター)

1973年東京都生まれ。日本大学理工学部機械工学科卒。機械専門商社、プライス・ウォーターハウス・クーパース・コンサルタント、ITベンチャー、ソーシャルベンチャーの副社長を経て、2010年1月よりNEWVERY事務局長。2011年4月より同理事。京都市が主催する、京都国際マンガ・アニメフェアの広報担当と、京都版トキワ荘事業の事業責任者。団体著書に『漫画家白書』『マンガでメシを食っていく』『マンガで食えない人の壁』など。

企業に居た頃は常に自身の市場価値向上を意識して働いてきたと言う菊池さん。しかし、その途中ベンチャー企業の倒産を経験し、企業人から一転して、現在のNPOでニート支援をはじめました。NPOの活動のひとつ、「トキワ荘プロジェクト」では漫画家を志望する若者へ格安で住まいを提供。京都国際マンガ・アニメフェアでは事務局を務めるなど、業界が厳しい状況にさらされている中、自らの手でコンテンツをつくり出すことにも取り組んでいます。

菊池さんは、ITベンチャーからNPOへ渡るという大きな転身の中で、「結果を出すこと」から「結果が何を生むのか」へ目標が変わったと言います。しかし、これはそれまでの生き方の否定ではなく、それまでの仕事で養われた能力や知識があったからこそできることであるとも。

当日は、〈企業〉から〈NPO〉へと渡られたお立場から、お話をして頂きたいと考えています。また、トキワ荘プロジェクトのように、若手の教育から業界内でのコンテンツの創出まで、異なる位相での活動を行なっているその姿勢についても、お話を伺いたいと思います。

○関連リンク

・トキワ荘プロジェクトに入居するメリット・デメリット
トキワ荘プロジェクトの特徴がわかりやすくまとめられています。
http://tokiwasou.dreamblog.jp/blog/274.html

・「精神と時の部屋」で修行に専念? 漫画家を目指す若者支援「トキワ荘プロジェクト」
トキワ荘プロジェクトについてのインタビュー記事が掲載されています。マンガ出版業界が“死に筋”でありながら、アニメ・ドラマ・邦画の原作を担うマザーコンテンツであることにも言及されており、マンガ業界におけるコンテンツ創出の必要性を解説されています。
http://news.nicovideo.jp/watch/nw232368

・ツイッターアカウント
https://twitter.com/t_kikuchi

○関連書籍

・マンガで食えない人の壁(NPO法人NEWVERY/2012年)
トキワ荘プロジェクト制作。漫画家支援研究書第3弾。
http://tokiwaso.s2.bindsite.jp/05.html

 

山下正太郎さん(WORKSIGHT LAB研究員/WORKSIGHT編集長)/コメンテーター)

1982年生まれ。京都育ち。2007年京都工芸繊維大学大学院修士課程修了、コクヨ入社。ワークプレイス設計者、コンサルタントを経て、2011年ワークスタイル情報誌WORKSIGHT (http://www.worksight.jp/) 創刊。ワークプレイスのプログラミング、コンセプト立案、などクライアントワークと並行して、主に企業を対象とした働き方やワークプレイスの動向について調査・研究を行っている。

ワークプレイスの研究の傍ら、ワークスタイル情報誌「WORKSIGHT」の編集長を行われています。今回はコメンテーターとしてご参加頂きます。

実は、第3回のキャッチフレーズ「履歴書をつくる・履歴書をやぶる」を考えたのも山下さん。そのフレームワークの建て方と、本質を突く鋭いコメントで、イベント全体をよりわかりやすく、面白いものにして頂けることを期待しています。

現代日本人の働き方の傾向やワークプレイス設計で注目されていることなど、オフィスワーカーなどの話も踏まえて、大局的なお話をして頂きたいと考えています。

○関連リンク

・WORKSIGHTとは
山下さんが編集長を務める「WORKSIGHT」のweb版。今回のテーマである「働き方」(あるいは生き方)と、山下さんの専門である「環境」、そして「成果」の関係性がわかりやすく描かれています。
http://www.worksight.jp/about.html

・#53 海外の先進企業から学ぶ働き方のヒント「オフィス空間から組織のカタチについて考える」
スクーにて行なわれたオンライン授業が閲覧できます。雑誌「WORKSIGHT 03」の記事をベースに、オフィス空間だけでなく組織のあり方という根幹的な部分にまで、独自の知見を展開しています。
http://schoo.jp/class/53

・twitterアカウント
https://twitter.com/shtrym

○関連書籍

・WORKSIGHT 03「イントラプレナーシップに火をつけろ!」
山下さんが編集長を務める「WORKSIGHT」の雑誌版。年2回発行。3号は、社内起業家について、空間環境と制度の両面から分析を行っています。
http://www.amazon.co.jp/dp/4903443531/