PROPS プロトーク[第3回]「働き方・生き方・稼ぎ方」第1部事前レビュー
執筆者:山下健太郎(宿泊施設管理・運営 /PROPS 第3回第1部コーディネーター)
PROPSプロトークの第3回は、「働き方・生き方・稼ぎ方」をテーマに開催します。
その第1部では、『転職経験者に聞く「キャリアって、結局なんですか?」』というサブテーマを立てました。
以下にご紹介する3名のゲスト登壇者に、それぞれの環境の中で訪れた転職の経験とそこから培われた独自のキャリアについてご自身の経験を語っていただき、建設業界で働く技術者の転職をエージェントとして支えている平野竜太郎さんを交えてお話します。
大企業であっても終身雇用制度は機能しなくなってきた事が社会的に共有されてきている時代に、会社組織の中で働く人全てが、未来を見据えてどんな仕事をしていくか、どんな道を進みたいかということを考えなければいけない・・・とピシャっと言えれば楽なんですが、キャリアというものは自分の意識だけで積み上げることができるものではありません。
キャリアの曲がり角と言うのは、ある日突然働く場所を無くしたり、環境が悪くなってしまう場面がほとんどです。また中に入るまでは意に沿わない仕事であっても、働いている中で、社会の中での自分の立ち位置が俯瞰的に見えてくることも多々あります。
今回第1部にお呼びしたゲストの皆さんは、そんなキャリアの曲がり角を手探りで進みながら、働くということについてある種の「自然体」を獲得しているのではないかと感じています。その過程で何を感じ、何を掴んだのかということを深く掘り下げていきたいと思います。
周りの人達はどのようにして自らのキャリアを生かし、どんな働き方をしているのか?働くということについて、自分の中の固定観念を壊してみた方が良いのではないか?多かれ少なかれ、この交流会に参加されている皆さんは悩み考えているでしょう。
それを具体的に、出来る事ならゲストの方だけでなく参加される皆さん自身のキャリアとこれからの期待、不安を語れる場所を設け、多くの具体的なキャリアの形を見ることができる場にしたいと考えます。
しかし、「働き方」について考えだすと、とにかく自由な働き方を望む論点に話が飛び、得てして空回り気味な「意識の高い」話になってしまって付いていけない・・・となる方も多いと思われます。
でも大丈夫。第1部では地に足のついた、意識の低い所からビルドアップしていきます。
まず、自分の人生設計のなかに転職というものを据えなくてはいけない時代ですが、転職を前提に置くというのは非常に不安な部分があるので、きちんと自分に必要な分を考えて稼ぐという話をしていきたい。「稼ぐ」ということについて、正面切って話をします。そして、キャリア意識を先だてて戦略的に転職をする、というよりも、リストラであったり、事業転換であったり、ブラックな職場からの脱出であったりといった、余儀なくされる転職に際して何を考えるか、実際にそんな場面を生き延びた経験も含めて明るく話していきたいと思います。
他ではちょっと見ることができない建築・不動産業界の転職ガイドとしても、是非聴いていただきたいお話が沢山あります。期待していただきたいです。
それではゲストの皆さんをご紹介いたします。
ゲスト登壇者紹介
内藤滋義さん
(コンストラクションマネジャー/三井不動産アーキテクチュラルエンジニアリングCM本部)
1971年、山梨県生まれ。工学院大学大学院修了後、熊谷組入社。商業施設やマンションの設計業務、全社共通のCAD基準の策定業務などにかかわる。森ビル入社後、ソフトバンクとの合弁会社シーエムネットに出向し、電子商取引サイトの構築やCM業務にかかわる。外資系不動産投資会社にて、オフィスビルをはじめとしたCM、PM業務などを担当した後、現職。1級建築士、宅地建物取引主任者、ファイナンシャルプランナー。
大学院から大手ゼネコンに入社するも、バブル崩壊後の人員削減によって転職を余儀なくされ、そこからITを利用した発注システムの構築、外資系企業での経験を経てコンストラクションマネージャとして改めて建設の現場に関わることになった内藤さん。普通に働きたいのだが周囲の状況が常に変わっていったということです。
ですがその急転する状況の中に居たからこそ、転職エージェントの平野さんが「40代で今の職場に転職できる人は滅多にいない」と評価するキャリアを積み重ねることができたとも言えます。特に外資系企業は人事評価システムの自己評価制度、そして突然言い渡される退職など、企業風土はそれぞれに大きく違いがあったと言います。その風土の違いについてどのように適応し、またどこで自分自身の働き方を貫いたのかについて、お話いただきたいと思っています。
○書籍の紹介
・「増補改訂版建築学生のハローワーク」(五十嵐太郎・編 彰国社)
この書籍の中で、「発注者の視点から建物をマネジメントする」というインタビュー記事で内藤さんが取り上げられています。コンストラクション・マネージャーとして投資会社の立場から、国際的に膨大な資産が都市に流れ、そして撤退する現場を見てきた経験から、よい建築を作り上げるためには経済原理と建築の両方の知識を獲得する必要があると考えたとのことです。
http://www.amazon.co.jp/dp/4395241182
大久保慈さん(建築家/フィンランド建築家組合〈SAFA〉正規会員)
1974年生まれ。1998年明治大学理工学部建築学科卒。1999年よりロータリー財団奨学生としてヘルシンキ工科大学(現アアルト大学)留学。2000年よりディプロマ学生として正規入学。2009年同大学卒業。在学時よりR-H Laasko、A-Men、JKMM、K2S等の建築設計事務所に勤務。2012年に帰国。10月より明治大学研究推進員として建築学科の国際プロフェッショナルマスターコース立ちあげに関わる。2007年より自身の建築設計事務所でも活動。著作に『クリエイティブ・フィンランド 建築、都市、プロダクトのデザイン』。
フィンランドに留学し学びながら建築設計事務所で設計に携わってきた大久保さん。いつの間にか10年の年月が経っていたといいます。フィンランドという国のスケール感や、人々の働き方に対する意識の違い、合理的な考え方などを伺ってみれば、なぜそれだけ長く居たいと思い働いていたのかが感じられると思います。
また、フィンランドの建築設計者はライセンスのあり方や職能組合の仕組みといった点で日本の建築士制度と違いが大きく、それぞれどのような社会の仕組みを背景にしているからなのか、という事について考えさせられます。海外で働くということはその社会のサイズ、地勢的な状況によって大きく異る環境に身を置くことであるということを、具体的に表していただけると考えています。
○著作の紹介
・「クリエイティブ・フィンランド 建築、都市、プロダクトのデザイン」(学芸出版社)
フィンランドという国の風土について解説し、そしてそこからどのようなデザイン思想が生まれ、建築、都市、そして社会や企業組織を形成するのか、その特徴について考察されています。
http://www.amazon.co.jp/dp/4761524952
・SADI定例講演会「クリエイティブ・フィンランド」
大久保さんがフィンランドで留学された際のカリキュラムや、実際に建築設計事務所で働いた経験などについて講演された記録です。
http://sadiinfo.exblog.jp/18279242
・ツイッターアカウント
https://twitter.com/MegumiOkubo
高杉義征さん(不動産仲介/横浜スタイル横浜本店システム部部長)
1981年生まれ。山口県宇部市育ち。スターツ株式会社(現スターツコーポレーション株式会社)入社後、不動産売買仲介営業、賃貸営業、賃貸管理業、プロパティマネジメント、アセットマネジメントと不動産業に幅広く携わる。2007年に横浜スタイル株式会社NIKKEIの設立に合わせ入社。常に現場のお客様の動向を追いながら、ウェブサイト政策のディレクション、不動産広告のデザイン、広告分析等、旧来の店頭集客に囚われないマーケティング集客を実践している。
高杉さんは不動産仲介のプレイヤーとしてPROPSに関わっていて、今回は不動産業界の話をしていただきたいと考え登壇をお願いしました。街場の仲介業者を知るだけでなく、不動産投資に携わった経験もあり、さらに現在はITに特化した広告活動で営業している不動産業の新しいスタイルを作り上げるなど、不動産業界を全体的に見据えており、ソーシャルメディア上でも面白い発言を繰り出しています。今回は特にブラックな職場での体験やそこからいかに抜け出したか、そしてその中で考えた不動産営業の体質について語っていただきたいと考えています。
○関連リンク
・「ytakasugiさん、僕たち不動産仲介クラスタは独立でしか幸せになれないのでしょうか?」
一般の不動産仲介業に勤める人はどのようなキャリアプランを持てば幸せに生きていけるのか、色んな出口戦略を高杉さんが解説しています。意外な業種から仲介業に参入するという話など、不動産業の人の流れを概観することができる面白いまとめです。
http://togetter.com/li/392365
・横浜スタイルが選ばれる3つのスタイル
現在高杉さんが勤められている横浜スタイルが、既存の不動産仲介とどのような差別化を図っているのか分かりやすく説明されています。
https://www.yokohama-style.jp/contents2/introduction/ReasonLanding.html
・ツイッターアカウント
https://twitter.com/ytakasugi
平野竜太郎さん(キャリアコンサルタント/リクルートキャリア)
1974年神奈川県生まれ。1996年二松学舎大学国文学部国文学科卒業後、地方出版社へ入社。賃貸・不動産売買情報誌の編集・営業に携わり発行人などを経て、2007年リクルートエージェントに入社。現在は建設・不動産領域における技術者担当として採用企業・転職希望者双方を担当する、建設業界専門コンサルタントとして活動中。
転職エージェントとは、転職希望者の要望を聞きながらスキルや職場環境が合う企業へのマッチングを行い、転職活動を支援する役割です。
平野さんは不動産・建設関連企業の専門職で働く人達の転職支援を行う中で、資格を持っているのに自己アピールが不十分で転職の際に損をしている、もったいないという意識を強く持っているといいます。今回平野さんには、転職の流れの中で、エージェントはいかにして転職者の支援を行うのかという解説からしていただきたいと思っています。また、職種別での転職市場の動向や、どのような資格・スキルを持った人が転職において有利かということについても細かく伺えればと思っています。
平野さんは大学時代は国語教師を志望していた文系だったということで、建築・建設業という理系の専門職がどのような意識を持って転職に臨んでいるのか、興味のある面が多々あるということです。
転職者は転職エージェントに対してどのように接すればスムーズに希望する職場に就くことができるのか、または逆に失敗してしまうのかということを個々にアドバイスもいただきながら、どのようにして転職というものへの心構えをしておくべきか、またどのように考えれば現在のスキルを生かしながら、さらに価値を生み出せる部門に関わることができるのかという事を語っていただきたいと考えています。
○関連リンク
・転職成功ガイド(リクルートエージェント)
転職の流れや、その中でエージェントが果たす役割について分かりやすくまとめられています。
http://www.r-agent.co.jp/guide/
2013年1月5日