PROPS プロトーク[第4回]「マーケティング・レイティング」事前レビュー

レビュー/再録


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執筆者:TEP_(外資系不動産 /PROPS 第4回コーディネーター)
PROPS第4回は「マーケティング・レーティング」をテーマに開催致します。
そもそも、不動産とは、どの様にして市場に出されて、どの様な経緯を経て取引されるのか。そういった基本的な仕組みから、不動産流通市場は今後どの様になっていくのか(いくべきか)という所までお話頂きます。

今回は、不動産鑑定、インターネットを通じたエンドユーザーへの橋渡し、リノベーション、住宅供給と維持管理、新形態の不動産事業の提案……といった、不動産流通市場における5つの立場の方にご登壇頂き、流通の仕組みを川上から川下までお話し頂きます。

賃貸、分譲という違いはあるにせよ、誰もが家に住んでいると思います。衣食住の一つな訳ですから、家を選択する行為はとても重要な行為です。特に分譲住宅の購入となると人生において何度も経験するものでは無く、とても慎重な判断が必要となります。しかし、私たちはその流通の仕組みをほとんど知りません。複数の不動産屋に行っても、何故同じ物件を紹介されてしまうのでしょうか。礼金って何に使われているのでしょうか。

また、不動産業界においてどの様な物件が良い物件とされるのでしょうか。良い空間を設計すれば、それが価格に反映されるのでしょうか。賃料や坪数以外の、価値指標はあるのでしょうか。そして、適切に評価される事が、流通にどの様に関係するのでしょうか。

今回の登壇者5人は、それぞれ不動産の流通・評価におけるキーとなる業務に携わっておられるプレイヤーです。それぞれの立場から、その仕組みと現状の問題点を把握しておられます。事業者、エンドユーザーの中間的立場として、5人の登壇者には、不動産の流通と評価に関しての関係性、現状、将来についてお話し頂きたいと考えております。

 

ゲスト登壇者紹介

服部毅
(不動産鑑定士/青山リアルティー・アドバイザーズ)

1967年千葉県生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、三井信託銀行(現三井住友信託銀行)入社、不動産開発業務、仲介業務等に従事。財団法人日本不動産研究所入所にて、鑑定評価等業務に従事し、2006年現会社に移籍、取締役に就任。2011年国土交通省「中古住宅・リフォームトータルプラン」に関し「国内外における中古住宅の流通状況と中古住宅の価格構成要素に関する調査研究業務」補助事業を実施。国土交通省・不動産流通市場活性化フォーラム委員。

不動産鑑定士である服部さんの業務は、不動産の価値を細かく算定し積み上げ、その価額に反映させることで、不動産価値を比較するための材料を提供する事です。投資ファンドが物件購入する場合、投資家に対して物件価値を説明する必要があります。その説明の根拠になるものの一つが、不動産鑑定士が作成したレポートです。一般的に、不動産の価値がどの様に算定されているか、その教科書的な鑑定手法をお話しいただきたいとおもいます。

さらに、服部さんは、その理論上の鑑定価格と、市場価格とに乖離が生じていると仰っております。そこに乖離が生じる理由は何であるのか、どの様にすることで、乖離をなくすことが可能であるのか(適正な市場価格を求めることができるのか)。その様な、不動産鑑定士の腕の見せ所についてもお話頂きたいと思います。

また、服部さんは、不動産流通市場活性化フォーラムの委員をつとめるなど、事業系のみならず、住宅系の問題についても精通されています。調査を通じて米国における取引システムなどにも詳しく、住宅系と事業系、日本と米国、といった異なる環境との比較からご見解を伺いたいと考えています。

服部さんには、あまり身近でない不動産鑑定士の職能についてお話し頂くと共に、中古住宅市場の未来について鑑定という立場からお話し頂きたいと考えております。

○関連書籍
・「これからの住宅市場ビジネス」(中古住宅・リフォーム研究会・編 ぎょうせい)
服部さんの事務所に伺った際に、ご紹介いただきました。国が策定しようとしている「トータルリフォームプラン」を中心として、今後の中古住宅市場・リフォーム市場の現状と、中古住宅市場の活性化を目指す背景、活性化がなされた先の未来について解説されております。
「トータルリフォームプラン」の策定にあたって開催された「トータルリフォーム検討会」で用いられた資料を用いて、わかりやすく解説されております。
http://www.amazon.co.jp/dp/4324094659

○関連リンク
「不動産流通市場活性化フォーラム」 提言
服部さんが委員を務められた不動産流通市場活性化フォーラムの報告書。今回のPROPS の中心の話題となる、不動産流通システムの問題点をとりまとめ、不動産流通システムの中核となっているレインズシステムの見直しの検討をはじめとした提言がまとめられています。
http://www.mlit.go.jp/common/000215139.pdf 

・ツイッターアカウント
https://twitter.com/bondy_hattori

 

野々村範之(サンゼロ賃貸/株式会社サンゼロミニッツ)

1978年千葉県生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、Web系のプログラマー、システム管理者を経験後、新規事業担当として地域情報サービスの運営を開始し、スピンアウトして分社化。当初は飲食店向けの販促などを主軸としていたが、収集した地域情報から住所を「周辺環境スコア」としてレーティングした賃貸サービス「サンゼロ賃貸」の運営を開始。

野々村さんは、プログラマとしてキャリアをスタートし、IT業界を渡り歩いてこられました。その中で、ブログで話題になっている地域情報を提供するサービス「30min」を公開されました。その後、そのサービスで得た情報を整理し、物件情報だけでなく、物件周辺の情報(周辺環境スコア)を提供する「サンゼロ賃貸」の公開をされております。

野々村さんは、ご自身の経験から、不動産物件を探す為の新たなウェブサービスを開発されました。
・自分で引越しした際に、必要なものが近くになかった。
・同じ駅徒歩10分の物件から部屋を決めたら、スーパーは近くになく駅前だった
・駅近の物件ならスーパーも近くにあるだろうと思ったら違った
・妊娠していた妻が、スーパーに行くのに困った
賃料や、駅からの距離、広さ以外の条件で、不動産を検索出来るサイトが必要ではないか。そして、「30min」で得たデータを活かせるのではと感じ、「サンゼロ賃貸」をオープンされました。

野々村さんは、建築・不動産という立場ではなく、ITエンジニアという今回のPROPS登壇者の中でも特徴的な立場におられます。その為、不動産に関する情報をどのようにマネジメントし、提供することで、エンドユーザーにとってどのようなメリットが生まれるかについてお話し頂きたいと思っております。

○関連リンク
・「30min.」はなぜスパムが混ざらないのか? (ASCII.jp)
ITエンジニアである野々村さんへのインタビュー記事です。「30min」の開発に秘話についてお話されております。
http://ascii.jp/elem/000/000/566/566925/

・周辺環境スカウター
サンゼロ賃貸で利用している「周辺環境スコア」を測定するシステムです。任意の住所を入力することでその場所のスコアを表示することができます。是非、皆さんもご自身の住宅の周辺環境スコアを測定してみては如何でしょうか。
http://chintai.30min.jp/site/check/

・ツイッターアカウント
https://twitter.com/nonomura

 

福井信行(ルーヴィス代表 リノベーションデザイン・施工管理)

1975年神奈川県生まれ。高校卒業後、3年半のニート生活の後、目黒通りのインテリアショップ「ACME Furniture」にて4年間、中古家具のバイヤー兼メンテナンスを担当。その後4年間賃貸管理会社にて賃貸管理業務を経て、2005年ルーヴィス設立。マンション、戸建を中心に木造アパート、長屋、平屋など、年間30件程度のリノベーションを手掛けている。

福井さんはインテリアショップ、賃貸不動産管理会社の経験の中で、「古いものは何故価値が落ちるのか?」という疑問を感じ、ROOVICEを立ち上げられリノベーションの世界へと活躍の場を移されました。

ROOVICEは施工を中心にリノベーションに関わる会社で、施工とリノベーションデザインをワンストップで行っております。ROOVICEでは、福井さんがデザインを手掛けられる以外に、他の設計事務所と協働し、デザインは設計事務所が、施工はROOVICEが手掛けられる事もあります。

ROOVICEの活動の中で、福井さんは「リノベーションは費用が掛かりすぎる上、特殊解であり、一般に普及させる事は難しいのではないか。原状回復が一般解であり、その原状回復に価値を持たせる事が必要である」とも感じ、不動産の退去時に行う原状回復の延長線上で環境改善を行う「原状回復の125%」という提案をされたりもしております。

不動産も、施工も、デザインも経験をされ、他の事務所の方と協働される事も多い福井さんは、視野が広く、流動的に動くことができるため、プロジェクトに関するコーディネーター的役割として働かれているという印象を受けます。福井さんには不動産、デザイン、施工と言った横断的な立場からご登壇頂きたいと考えております。

○関連リンク
・現場に飛び込み体得したリノベーションの心得(ケンプラッツ)
福井さんの活動に関しての、インタビュー記事です。
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20120116/556826/

・ツイッターアカウント
https://twitter.com/ROOVICE
https://twitter.com/nov_fukui

 

中田誠(都市再生機構 東日本賃貸住宅本部 設計部)

1957年兵庫県生まれ。大阪大学建築工学科大学院修了後、住宅・都市整備公団(現UR都市機構)入社。入社以来関西の御影・千里山・仁川団地、関東の草加松原・上野台・赤羽台団地の建替え、曳舟駅前再開発などの設計を担当。技術研究所在籍時に住棟改修実験プロジェクト「ルネッサンス計画」の「ひばりヶ丘」及び「向ヶ丘第2」の両プロジェクトを担当。2011年より現職。一級建築士。

近年、団地の魅力が見直され、団地ブームが沸き起こっております。その団地を保有するのがUR都市機構という独立行政法人です。今回は、UR都市機構に所属する一級建築士である中田さんに、不動産流通市場におけるオーナー側の立場として御登壇頂きます。

UR都市機構は賃貸物件を多く保有しているため、中田さんは長期的に市場の要求に答えるべく設計計画を行われてきました。短期的なブームに乗るのではなく、変わりゆく市場の評価と向き合うことの難しさがあると、中田さんは仰っております。

UR都市機構が保有しているストックは、築30−40年の物件が多く、耐震性や、現在のライフスタイルに対応していない等の問題を抱えているものが多いのですが、そういった問題を解決する為にUR都市機構はルネサンス計画という団地再生の為の実験的試みを実施され、中田さんはこの計画も担当されておりました。

中田さんには、団地の魅力を伝えて頂き、ストックを保有するオーナー側の立場として、どの様な活動をされているのか、どの様な難しさがあるのかを、お話して頂きたいと考えております。

○関連書籍
・団地に住もう(東京R不動産・著 日経BP社)
事務所としての活用や、リノベーションの事例など団地の様々な活用事例が紹介されています。また、UR都市機構の団地の一部は、リノベーションを行った際に原状回復が不要である物件もある為、団地のDIYリノベーションの方法の紹介などもされております。
http://www.amazon.co.jp/dp/4822274594

○関連リンク
・ルネサンス計画(UR都市機構)
ひばりヶ丘団地(東京都東久留米市)と、向ヶ丘第一団地(大阪府堺市)を実験的に回収するプロジェクトです。ハード面、ソフト面の観点から既存の団地をどの様に再生できるのかを検討するためのプロジェクトです。
http://www.ur-net.go.jp/rd/rn1/

 

田中歩(あゆみリアルティーサービス代表取締役)

1967年神奈川県生まれ。慶応義塾大学経済学部卒業後、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社。不動産部門にて各種業務を経験後、2008年中古住宅売買において不動産・金融・建築を三位一体でサポートする目的であゆみリアルティーサービスを設立。ホームインスペクション付中古住宅売買コンサルティング仲介、投資用不動産コンサルティングなど不動産業務全般を手掛ける。日本ホームインスペクターズ協会理事、公認ホームインスペクター。

信託銀行での経験をお持ちの田中さんは、現在不動産コンサルタントの業務に携われております。信託銀行時代は、複雑なスキームを組む業務を経験され、現在のコンサルタント業務では個人を中心とした顧客の不動産に関するコンサルタントをされております。そのため、不動産だけでなく、それに関連する、金融、資産運用、法律といった幅広い知見を持たれております。そんな田中さんには、今回総論的立場としてご登壇頂くとともに、不動産仲介の基本的な枠組みや、不動産取引の現状(囲い込みが起きているや、マーケットの不透明性など)といったお話をして頂きます。

また、田中さんはコンサルタントとして、新たな仕組みを考えて、他業種の方と共同できるプロジェクトを立ち上げられたりもしております。その一つの例として、福井さん、建築家の内山章さんと共同で進める「木賃デベロップメント」があります。下にリンクを貼っておりますので、是非ご参照ください。

○関連リンク
・安心中古住宅売買の極意
あゆみリアリティーサービスのブログです。ミニ小説という形式を用いて、中古不動産売買における注意点を紹介しています。
http://ayumi-ltd.livedoor.biz/

・初期費用ゼロで実施できるリノベーションを開始(週刊全国賃貸住宅新聞)
「初期費用ゼロで実施できるリノベーションプロジェクト(記事内より引用)」である、木賃デベロップメントが紹介されております。
http://www.zenchin.com/news/2012/10/post-1255.php

・ツイッターアカウント
https://twitter.com/ayumiltd

ポスターができました。掲示や展開など、ご自由にご活用ください!