PROPS プロトーク [第2回] 開発・オペレーション|guest review 中尾俊幸

レビュー/再録


2012年12月9日(日) に開催された「PROPS プロトーク [第2回] 開発・オペレーション」の、トーク終了後に中尾俊幸さんに執筆いただいたレビューです。

オルタナティブとして、地域開発におけるフロンティアが存在しているということを示す

中尾俊幸


鉄道会社等がオペレーションと一体となり、海外へのビジネス投資を行っている。それは建築・不動産業界をも引っ張る要素があるのではないか。いわばエネルギー資源開発のプラント経営と同様の投資活動として捉えられるのではないか。――そんな論点が議論の軸の1つでした。そこでは企業論理としての、海外への展開も含めた市場原理にまかせたチャレンジの流れが示されていました。

それに対して私の立ち位置は、それらのオルタナティブとして、地域開発におけるフロンティアが存在しているということを示すことだったと感じています。

今回紹介した金沢のような事例は、地域における投資とその回収を地域の中で行う試みです。計画時点では収益分岐をぎりぎりで模索しながら、官民が協力して事業が実を結ぶという好例です。

大都市の一部の投資適格な場所をのぞくと、大都市の辺縁部でも、このような試みが重要になると認識しています。話題の共通項として縮小という言葉がありました。時代のニーズに的確に反応しながら官民連携により、まちなかの再投資の仕組みづくりやスマートシュリンクの実践といった場面に開発の今後があるのではないでしょうか。これは縮小局面における知恵を絞りに絞った手法や土壌形成が求められるフィールドです。そして藤村さんの鶴ヶ島での取り組みは、時代の先端/フロンティアとしての開発の、1つのプロトタイプを予見しているように感じました。

今回のトークの中では、まちづくりという話題の中で、地権者との関係性やその合意形成についてはあまり触れませんでした。仕事を進める上で地味ですが、大きなウェイトを占める分野がこの合意形成です。推薦本の『まちづくりびと』を読めば、種々雑多なエピソードがあるということがわかると思います。各々の開発において地権者の人数や法人・個人の割合など様々な違いがありますが、それらのドラマの集積たるや、まさにまちづくりの結集です。

今後の開発の展開におけるスピード重視の状況を鑑みると、特に公共や法人所有の種地となるような土地の集約化・機能再編が、市街地のインフラ再編の中でどう課題への役割を果たしていけるか、具体的なビジョンを描けるかがポイントになっていくでしょう。先代がつくり上げたものを、時代に応じてつくり直す、そうした開発が主流になる時期が来ていると感じています。