PROPS プロトーク [第2回] 開発・オペレーション|guest review net_heads

レビュー/再録


2012年12月9日(日) に開催された「PROPS プロトーク [第2回] 開発・オペレーション」の、トーク終了後にnet_headsさんに執筆いただいたレビューです。

実務者の立場、歴史研究の立場から、
いかに開発を語ることができるか

net_heads


PROPSプロトーク第2回「開発・オペレーション」に、今回はコーディネーター兼登壇者として参加した。前身の建築・不動産実務クラスタ交流会から関わってきた身としては、「開発」というものをネガティブなイメージなしで語れる場として、そういう議論の場があるという認知の段階から、確立という次のステージへと移ってきたのかな、という素直な感想を持った。

多分これは啓蒙されて変わったというのではなくて、不景気で投機的な案件もぐっと減る中、多数の乱開発が行われれているというイメージから、例えば「渋谷」「丸の内」「六本木」と言った地域名ではなく、「ヒカリエ」「ソラマチ」といった施設名称で一つ一つの開発が物語的に語られるようになったことで、身近に感じられ冷静な目線で眺めることの出来る状況が整ってきたからだと思う。

それは同時に国内市場の縮小を意味する。つまり喰っていけなくなるということだ。そこで「ネクスト・マーケット」、つまり業界のブルーオーシャンはどこにあるのだろうか? というPROPSの全体テーマが意味を持つ。

山下ピー・エム・コンサルタンツの川原氏が、具体的なソリューションを提示し、アール・アイ・エーの中尾氏が、日本人の良さを引き立たせるような「まちづくり」を語っていくことは予想された。事実その通りだったので、自らは今後広がりのあるような、示唆的な話をするように努めたつもりである。

冒頭のプレゼンテーションにおいて、民鉄とJRの違いを歴史的経緯・事業範囲・事業の変遷の観点から、また、海外進出事例の類型として東西の民鉄の事例を挙げ、前者は単発型・後者は事業継続型と対比した形で紹介することで、鉄道事業って何? 海外進出ってどうやるの? どうやって関われるの? といった問いに対する1つの解を示した。

一定の結論に達したわけではなく、聴衆の問いや反応は様々だったが、登壇者として共有出来るものはあったと思う。

個人的に琴線に触れたのは、建築家の藤村氏が、インドではなく東南アジアを引き合いに出す理由として、都市のスケール感を挙げたことだ。非常に共感を持つことが出来た。設計者としてはやや異端な建築史を学んでいた身からすると、中国に対する日本・インドに対する東南アジアという対比は至極当然のもので、建築や都市の作り方にも反映されている。

また、日本の開発を巡る歴史を紐解くことで、「開発」というものの正統性(正当性ではない)を立てていくのも、これまで実務クラスタには無かった視点であった。

最後に、コーディネーターとしての立場から、一つ裏方的なお話をしておきたい。

実は「開発」というコトバの定義が、最初からメンバーの中で共有されていたわけではなかった。ミーティングを重ねる中で、「土地・建物の所有形態が変わること」という定義、そして「市場原理型」と「問題解決型」の類型化に至った。我々実務者がモヤモヤッとアタマの中で理解している内容を、ズバッとワンフレーズでまとめた司会の納見氏の卓見に感謝したい。

この会での内容が、来場者の方々、およびゲストやスタッフにとって、少しでも羅針盤になるようであれば幸いである。